徳島大学の研究特集

高齢者機能評価を用いたがん患者のリスクアセスメントを基盤とした治療方針の決定の検討

研究期間 2020/4/1 - 2024/3/31
研究課題名 高齢者機能評価を用いたがん患者のリスクアセスメントを基盤とした治療方針の決定の検討
カテゴリー 全てのクラスター研究クラスター一覧登録クラスター医学臨床
SDGs 3.保健
応募課題
クラスター長氏名 今井 芳枝(徳島大学大学院医歯薬学研究部、ストレス緩和ケア看護学分野、准教授)
所属する研究者氏名 荒堀広美(大学院保健科学教育部 博士課程前期)
近藤和也(臨床腫瘍医療学分野 教授)
板東孝枝(臨床腫瘍医療学分野 助教)
髙橋亜希(臨床腫瘍医療学分野 助教)
西村正人(徳島大学病院 産科婦人科 准教授)
阿部彰子(徳島大学病院 産科婦人科 助教)
滝沢宏光(徳島大学病院 呼吸器外科 准教授)
川上行奎(徳島大学病院 呼吸器外科 講師)
研究概要

本来、大部分のがんは年齢を重ねるほど、その発生率は増加する。さらに、平均寿命の延長や医学の進歩(低侵襲な診断技術や治療法など)により、高齢者のがん発症率・有病率が増大し、治療を受ける高齢がん患者が増加している。特に,高齢がん患者の場合、治療の有害事象と引き替えに得られる有益性の少なさから,若年者と異なる選択肢を提示する傾向がある。しかし,高齢がん患者でも適切な手術,薬物療法により生存期間を改善することは可能であり、単に高齢というだけで,QOLの改善や生命予後の改善を期待できる治療を受ける機会を失うことがあってはならない。

そのため、身体症状のみならず,患者をとりまく精神医学的問題,心理・社会的問題に対して適切なアプローチが必要であるといえる。しかしながら、がん医療における治療方針の決定では、簡便に測定できるPerformance Status(PS)を指標とすること多い。前述したように、加齢に伴う身体的変化や精神面、社会面への影響は人それぞれであり、個人差が多いことを考えるとPSだけでなく、機能の状態、依存症、メンタルの状態、感情の状態、栄養状態、複数以上の薬物療法、老年症候群などについて包括的に捉えて治療方針を決定する必要がある。

老年医学会においても高齢者総合的機能評価(Comprehensive Geriatric Assessment:CGA)にてアセスメントして、①fit;元気な非高齢者と同じ標準治療を受けることができる状態の患者、②vulnerable;元気な非高齢者と同じ標準治療は受けることはできないが、何らかの治療を受けることはできる状態の患者、③frail;積極的な治療の適応にならないと思われる状態の患者、3つに分類し、治療することを推奨している(参照:高齢者研究の概念的区分図)。CGAの評価方法としては、①G8;世界中で最も広く用いられているスクリーニングツール、②IADL(Instrumental Activities of Daily Living);身体機能を評価する最も一般的なツール、③CCI(Charlson comorbidity index);併存症の種類および重症度によってリスク分類を行うスケール、④居住状況(Social situation;社会とのつながり(社会支援ドメインに相当)を反映する指標である、⑤MINI-COG;認知機能のスクリーニングツールの5つが一般的であり、本研究でもこのリスクアセスメントを用いる(参照:CGA評価ツール)。

先行研究では、CGAを活用したアセスメントをした研究が報告され、その有効性について論述されるものの、それを活用することにより診療方針への検討まで踏み込んでいる研究はなされていない。本研究の構想は、①高齢がん患者の診療においてCGAを活用したリスクアセスメント(G8, IADL, CCI, social situation, MINI-COG)が患者をfit, vulnerable, frailのグループに分類できるかどうか、②実際に医師が判断した治療方針とリスクアセスメントによって決定した治療方針に違いはないか、を検討する。さらに、③prospectiveに従来の医師により決定する治療方針を行った患者とリスクアセスメントによって決定した治療方針を行った患者の合併症、予後などを検討する。①②③でリスクアセスメントによって決定した治療方針の有用性が証明されれば、CGAを徳島大学病院における電子カルテに搭載し、受診時に高齢がん患者がタブレット端末を活用してCGAを各自入力したデータを診療に組み入れることで、包括的に高齢がん患者の状態を捉えていくための医療体制を整備することにある。今回の研究では、①②を明らかにしていく。

研究概要図


※画像をクリックするとPDFが開きます。


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研究者の役割分担 今井芳枝:研究統括、研究データ収集・分析・解釈、原稿の起草
荒堀広美:研究データ収集・分析
近藤和也:研究データ解釈、原稿の重要な知的内容に関わる批判的な推敲
板東孝枝:研究データ分析・解釈
髙橋亜希:研究データ分析・解釈
西村正人:フィールド調整、研究データ分析・解釈
阿部彰子:フィールド調整、研究データ分析・解釈
滝沢宏光:フィールド調整、研究データ分析・解釈
川上行奎:フィールド調整、研究データ分析・解釈
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