徳島大学の研究特集

【終了】光環境制御により居住空間の衛生管理と健康維持を行うシステム開発

研究期間 2020/4/1 - 2023/3/31
研究課題名 【終了】光環境制御により居住空間の衛生管理と健康維持を行うシステム開発
カテゴリー 研究クラスター一覧医学終了した研究クラスター保健工学電気電子光応用バイオ栄養
SDGs 3.保健 6.水・衛生
応募課題
クラスター長氏名 高橋 章(大学院医歯薬学研究部、医学域、教授)
所属する研究者氏名 出口祥啓(大学院社会産業理工学研究部 理工学域 教授)
原口雅宣(大学院社会産業理工学研究部 理工学域 教授)
芥川正武(大学院社会産業理工学研究部 理工学域 講師)
榎本崇宏(大学院社会産業理工学研究部 理工学域 講師)
田中 克哉(大学院医歯薬学研究部 医学域 教授)
森根 裕二(大学院医歯薬学研究部 医学域 准教授)
西岡安彦(大学院医歯薬学研究部 医学域 教授)
東 桃代(病院 感染制御部 講師)
村上 圭史(大学院医歯薬学研究部 歯学域 准教授)
馬渡一諭(大学院医歯薬学研究部 医学域 講師)
下畑 隆明(大学院医歯薬学研究部 医学域 助教)
宮脇克行(大学院社会産業理工学研究部 生物資源産業学域  准教授)
粟飯原 睦美(大学院社会産業理工学研究部 生物資源産業学域  助教)
研究概要

 照明装置の進歩等により、一般生活の住居空間における環境光が劇的に変化している。特に、特定波長の強い放射束の光(ナローバンド光)が比較的容易に利用できるようになり、ヒトの生活空間に共存している微生物等に影響を与えることが徐々に判明し、光環境の危険性が指摘されていると同時に、その有効利用の可能性も指摘されている。

 生活環境で広く使用されている光(図1)の生物効果の中で、紫外光(UV光)については多くの報告がある(J Radiat Res. 2011;52(2):115-125, Aticancer Res. 2016; 36(3):1345-1356.等)。我々も、UVA、UVB、UVCの微生物に対する効果について殺菌に対する作用を中心に解析を行ってきた。しかし、微生物に対する可視光~近赤外のナローバンド光の影響および分子機構の解析は始まったばかりであり不明な点も多い。

 可視光から赤外光に至るナローバンド光の生物効果については、特に光合成に関する報告が多数ある(Philos Trans R Soc Lond B Biol Sci. 2014; 369(1640):20130243 など)。一方で、一般の住空間の環境を考えると光合成非依存的な生物活動が中心となる。皮膚科利用域を中心に、動物または動物細胞を用いた研究で、以下のような報告がある。緑色レーザーを用いた研究では、ヒト皮膚において、チロシンキナーゼの活性抑制、ERKの活性化を介してメラニンの生成抑制が起こることが報告されている(Appl Biochem Biotechnol. 2017;183(1):396-411)。また赤色レーザーをもちいた報告では、動物細胞のミトコンドリアのチトクロムCの活性化を介して多彩な生物効果を生み出す可能性が示唆されている(Cellular and Molecular Life Sciences. 2019;1420-682X;1-24)が、一般的にすべての細胞で起こるかどうかは明確ではない。赤~近赤外光はヒトにおいて抗炎症作用を示すことが報告されているが、その詳細な分子機構は明確ではない(Int J Radiat Biol. 2019; 95(9): 1326-1336)。以上から、ヒトや動物細胞のみならず、一般の住空間の存在する環境微生物も、可視光から赤外光に至るナローバンド光の影響を受けることが推測されるが、環境微生物や衛生環境に与える影響に関する研究報告は非常に少ない。

 本研究では、最先端の光源技術を利用して、光を機能性環境因子として取り扱い、ヒトの居住空間に共生している環境微生物に与える影響を分子機構から明らかにし、環境の衛生管理に応用しようとする。これは今まで主流であった照明に関する研究から離れて、紫外から赤外に至る光により、生物機能を制御しようとするものである。

 紫外線、可視光、赤外光は一般生活に密着した光であるが、すでに光の機能がわかっているとの意見もあり、新たな研究が行われていなかった。しかし発光ダイオードなど新しい光源の進歩により、まだまだ十分理解できていなかったことが判明してきた。我々の生活に密着している紫外線から近赤外に至る波長の光機能を十分に理解し、その利点と欠点を整理することは、今後の光応用にとって基本であり、電子工学、微生物学、光応用科学の分野を統合した新しい医用応用工学が生み出されると考えられる。これにより従来は想定できなかった微生物および一般生活への光応用研究が生み出されると考えられる。

研究概要図


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研究者の役割分担 高橋 章   研究統括、微生物学的解析(細菌を中心に)
出口祥啓   センシング技術の応用
原口雅宣   光照射システムの開発
芥川正武   電子制御システムの開発
榎本崇宏   シュミレーションによる解析
田中 克哉  病室での感染制御、衛生管理
森根 裕二   外科的診療現場における感染制御、衛生管理
西岡安彦   内科的診療現場における感染制御、衛生管理
東 桃代   病院全体での感染制御、衛生管理
村上 圭史  細菌学的解析 歯科的診療現場における感染制御、衛生管理
馬渡一諭   微生物学的解析(ウイルスを中心に)
下畑 隆明  微生物学的解析(真菌を中心に)
宮脇克行   食品加工現場における感染制御、衛生管理
粟飯原 睦美 食品微生物学的解析
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