研究期間 | 2021/4/1 - 2024/3/31 |
研究課題名 | 【終了】ミトコンドリア移植による加齢性病態、組織損傷、および治療抵抗性腫瘍に対する新規治療法の開発 |
カテゴリー | 全てのクラスター、研究クラスター一覧、登録クラスター、医学、終了した研究クラスター、基礎、臨床、薬学、創薬、バイオ、生物、ゲノム |
SDGs | 3.保健 |
応募課題 | |
クラスター長氏名 | 遠藤 逸朗(大学院医歯薬学研究部、医学域、教授) |
所属する研究者氏名 | 安倍 正博(大学院医歯薬学研究部 医学域 教授) 倉橋 清衛(大学院医歯薬学研究部 医学域 助教) 三木 浩和(徳島大学病院 輸血細胞治療部 講師) 金井 麻衣(大学院医歯薬学研究部 保健学域 助教) 篠原 康雄(先端酵素学研究所 蛋白質発現分野 教授) 高成 広起(ポストLEDフォトニクス研究所、医工融合研究部門 特任講師) 大西 恭弥(大学院薬科学教育部 博士後期課程) 伊藤 孝司(大学院医歯薬学研究部 薬学域 教授) |
研究概要 | 背景 ミトコンドリアは、酸素呼吸細菌の共生を起源とする細胞内オルガネラであり、内部に自身のDNAを持ち、併存する細胞核との協調のもとに増殖、遺伝している。ミトコンドリアは生命活動に必要なエネルギー(ATP)を酸素呼吸によって産生するほか、さまざまな物質の代謝や細胞内シグナル伝達に関与して細胞機能維持に関わるとともに、アポトーシス制御についても中心的な役割を果たしている。近年、加齢にともなうサルコペニアや糖尿病を含む各種代謝異常に関して、ミトコンドリア異常や機能低下の関与が示されている(Kauppila TES: Cell Metab 2017;25:57)。さらに、間葉系幹細胞から癌組織や障害組織に健常なミトコンドリア供給が起こり、癌組織の増殖、障害組織の再生や早期修復に関与しているとの報告がある(Misgeld T et al: Neuron. 2017 Nov 1;96(3):651-666., Paliwal S et al: J Biomed Sci. 2018 Mar 30;25(1):31.)。これらの知見より、健常なミトコンドリア移植は、加齢性の変化や組織損傷、癌腫などの治療ツールとして使用できる可能性がある。 目的 本検討では、健常ミトコンドリアの大量生産法の確立、ミトコンドリアの標的組織への効率のよい移行法の開発、ミトコンドリア移植により、加齢に伴う身体変化や代謝変化、虚血や重篤な組織損傷、あるいは治療抵抗性の癌腫に対する新規治療法の開発を目指す。 予想されるアウトカム どのような細胞がミトコンドリアの産生工場として優れているのか、種々のミトコンドリアの機能や単離方法についても評価することで、ミトコンドリアの健全性に与える環境の確認が可能となる。また、異なる細胞間における一方向性かつ能動的なミトコンドリア移動の詳細、とくに細胞膜の流動性や健全性の程度、細胞骨格の変化やミトコンドリア移植の効率化が明らかとなれば、基礎医学への貢献も大きい。さらに移植ミトコンドリアによる加齢性変化や障害細胞・組織の機能回復がみられれば、新規抗加齢療法あるいは新規再生医療ともいえる全く新しい治療ツールとしての可能性を見いだすことが出来る。 医学研究に与えるインパクト ミトコンドリア移植は、ミトコンドリア機能の回復にともなうエネルギー産生の増加、細胞機能回復、細胞障害の抑制などを介して、組織の再生や修復を促進する可能性がある。臨床的な病態としては、ショック状態や虚血、熱傷などの組織障害、そして加齢に伴う筋骨格系の脆弱性や膵β細胞におけるインスリン分泌低下のような退行性あるいは消耗性疾患がミトコンドリア移植療法の対象と考えられる。さらに、UCP-1発現ミトコンドリア移植による脂肪細胞内蓄積脂肪の減少、すなわち、メタボリック症候群の改善ツールとして、同じくUCP-1発現ミトコンドリア移植によるエネルギー消費増および熱産生による悪性腫瘍の抑制といった応用も考えられる。これらは、これまでに治療が非常に困難と思われていた病態を多く含み、全く新しい機序を介した先進的治療法開発の道を切り開く可能性がある。 |
研究概要図 | |
研究者の役割分担 | ミトコンドリア産生工場としての間葉系幹細胞(MSCs)(遠藤、安倍、金井) 酵母による種々の蛋白発現ミトコンドリアの大量生産(篠原、遠藤) Tunneling nanotubes(TNTs)を介したミトコンドリア移植(安倍、金井) 脂質二重膜内包化などによるミトコンドリアデリバリー法の開発(安倍) ミトコンドリア受容細胞におけるミトコンドリア構造変化および機能解析(高成) ミトコンドリア移植による損傷組織や加齢による病態改善(倉橋、三木、遠藤、安倍) UCP-1発現ミトコンドリア移植によるメタボリック症候群、難治性悪性腫瘍の改善(倉橋、安倍、遠藤) ストレス・老化に伴うリソソーム機能の変動解析(大西、伊藤) |