徳島大学の研究特集

【終了】翻訳における意味不一致の諸相の解明

研究期間 2017/4/1 - 2020/3/31
研究課題名 【終了】翻訳における意味不一致の諸相の解明
カテゴリー 全てのクラスター研究クラスター一覧終了した研究クラスター人文・社会科学人文
SDGs
応募課題
クラスター長氏名 山田 仁子(大学院社会産業理工学研究部、総合科学部・認知言語学、准教授)
所属する研究者氏名 シートゲス・オラフ(総合科学部・准教授・ヤパノロギー(日本学))
山内 暁彦(総合科学部・准教授・英文学)
山田 仁子(総合科学部・准教授・認知言語学)
吉田 文美(総合科学部・准教授・英文学、アイルランド文学)
(50音順、敬称略)
研究概要

   翻訳においては、単語、文、比喩などの修辞表現といったさまざまなレベルで原文と翻訳の間に意味の不一致が観察される。これは単語も修辞表現もそれが属する言語文化と密接に結びついており、原文に含まれる意味は、辞書に記述される意味だけに限られないものであることが原因と考えられる。
   翻訳者は原文の言語文化の特徴を最大限に訳出する事(妥当性:adequacy)と、また同時に翻訳の読者に受け入れられるために翻訳の言語文化に擦り合わせる事(許容性:acceptability)が要求される(Gideon Toury(1977))が、この二つの要求を共に完全に満たす事は困難である。その結果、原文に含まれる複雑な意味やニュアンスは翻訳によって一部が削ぎ落とされ、また異なる言語文化に属する語や修辞表現に置き換えられることによって新たな意味を得ることになる。
   本研究では、複数言語間での翻訳とその原文を比較する事によって、異なる言語文化の間で起きる意味の不一致がどのような状態に置かれているのか、また不一致を解消するために、また独自に成立する世界を創出するために翻訳者がいかなる工夫をしているのかを具体的に分析し、理想的な翻訳への指針を作成することを目指す。

研究概要図
研究者の役割分担 シートゲス・オラフ:村上春樹の作品のような日本語による作品がドイツ語に訳される場合などを材料として、原作と翻訳を比較する。翻訳者が原作の属する言語文化と翻訳の属する言語文化の狭間で、異なる言語や文化の特徴をそれぞれに生かしながら、また同時にその差異を受け入れられるように、いかに調整するのかを分析する。
山内暁彦:散文で書かれたイギリス文学の作品が日本語に訳される場合について、一つの作品に対する異なる翻訳を比較する。翻訳によって語りの調子が変化する例や、登場人物の性格が異なるものになる例が見られる。一つの原文から異なる意味が生まれているとも言えるこの現象の原因を探る。
山田仁子:認知言語学の立場から、翻訳において生じる意味の不一致とその調整の仕組みを明らかにする。異言語間で同じ意味を持つと多くの人が理解している場合でも、異なる言語に属する2つの語がそれぞれに表す意味の範囲(カテゴリー)や、中心的意味、強く結びつけて理解される要素などには、大きな差異があると考えられる。この差異が翻訳においてどのような問題を持つのか明らかにする。
吉田文美:英語詩を日本語に翻訳して理解しようとする際の困難について考察する。詩(韻文)は、散文と比べて通常の構文を大きく逸脱した倒置や省略、ひとつの語に複数の意味を持たせる両義性、比喩の使用などの要因により、日本語に訳すだけでは、元の詩の全てを説明しきれない場合が多い。詩の翻訳を困難にしている要因について、実例に則して分析する。
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