学生の研究紹介
スマホでウィルスを観察できる⁉
スーパーレンズの開発
博士課程に進んだ学生達は指導教員から与えられた研究テーマではなく、自分で課題を見出して研究テーマを設定し、自由なスタイルで研究を進めていくことが多くなります。
本コーナーでは本学博士課程に在籍する学生に焦点を当て、実際に何を考えてどのような研究に取り組んでいるのか、オフの生活はどうしているのか、博士課程学生の研究生活の実態について指導教官のコメントも交えてご紹介していきます。
今回登場するのは、先端技術科学教育部 原口 雅宣教授の研究室でメタマテリアルに関する研究に取り組む博士後期課程3年(取材時)の渡辺智貴さん。
本コーナーでは本学博士課程に在籍する学生に焦点を当て、実際に何を考えてどのような研究に取り組んでいるのか、オフの生活はどうしているのか、博士課程学生の研究生活の実態について指導教官のコメントも交えてご紹介していきます。
今回登場するのは、先端技術科学教育部 原口 雅宣教授の研究室でメタマテリアルに関する研究に取り組む博士後期課程3年(取材時)の渡辺智貴さん。
波長よりも小さいメタマテリアルによる光の制御
私の所属する原口研究室では、光とメタマテリアル※との相互作用による効果の基礎的研究及び応用に向けた研究を進めており、その中で私は可視・近赤外領域で光の性質(反射・屈折・吸収)を制御することのできるメタマテリアルについて研究しています。具体的には、可視・近赤外領域では波長が400nmから1μm程度なので、それよりも小さいサイズの金属構造体を作るイメージです。計算機を使っての構造設計はできても、実際にナノサイズの構造物を製作することができるかは別問題。私は実際に構造物を製作する部分をメインでやっているので、なかなか技術的なハードルが高い研究です。
※1. メタマテリアルとは、電磁波の波長より十分小さいサイズの人工構造物(メタ原子)を大量に集積してできる人工物質のこと。デザインされたメタ原子により、自然界の材料では起こり得ない特性を持つ材料を設計することができる。
スマホでウィルスが観察できるようになるかも!?
実際のメタマテリアルの製作方法ですが、まずは、元々存在する金属構造物にプラズマ化したアルゴンイオンのガスをぶつけることで、ナノサイズの構造物を削り出していきます。次に、構造物の特定箇所に金属を蒸着させて、設計通りのメタマテリアルに仕上げていきます。削り出しと積層をミックスさせた手法です。
光の振る舞いを自分たちで制御できるところがメタマテリアルの魅力です。それをもっと追求していくと、今まで自然界にはなかった、屈折率が負になるような材料をつくることができるようになるはずです。私の研究の目標は、光の屈折現象をメタマテリアルで制御することで、回折限界を超えて光を集光できる“スーパーレンズ”を実現することです。回折限界を超えて光を集光することにより、これまで電子顕微鏡でモノクロ画像しか見ることができなかった小さなものが、光学顕微鏡でリアルタイム観察できる可能性が出てきます。夢のような話しですが、スーパーレンズを装着すれば、血液中の病原体の検出やがんの生検組織診断もスマホでできるようになるかもしれないのです。
このようなスーパーレンズというのは、まだ理論研究の段階です。可視や近赤外域の光だと、どうしても波長サイズが短くなって、それに合わせてメタマテリアルの構造も小さくなっていくので、そんな小さなサイズのものをどうやって製作するのかという課題が残ります。ミリサイズぐらいの波長域だと、意外に作成工程としては簡単なので、こちら側の方が実用化に近いかなと思っています。
光の振る舞いを自分たちで制御できるところがメタマテリアルの魅力です。それをもっと追求していくと、今まで自然界にはなかった、屈折率が負になるような材料をつくることができるようになるはずです。私の研究の目標は、光の屈折現象をメタマテリアルで制御することで、回折限界を超えて光を集光できる“スーパーレンズ”を実現することです。回折限界を超えて光を集光することにより、これまで電子顕微鏡でモノクロ画像しか見ることができなかった小さなものが、光学顕微鏡でリアルタイム観察できる可能性が出てきます。夢のような話しですが、スーパーレンズを装着すれば、血液中の病原体の検出やがんの生検組織診断もスマホでできるようになるかもしれないのです。
このようなスーパーレンズというのは、まだ理論研究の段階です。可視や近赤外域の光だと、どうしても波長サイズが短くなって、それに合わせてメタマテリアルの構造も小さくなっていくので、そんな小さなサイズのものをどうやって製作するのかという課題が残ります。ミリサイズぐらいの波長域だと、意外に作成工程としては簡単なので、こちら側の方が実用化に近いかなと思っています。
1年間の留学で実感した博士人材の価値
博士後期課程に進むことを決めたのは、台湾の中央研究院への1年間の留学から帰国した頃でした。留学先でのポスドクの方や博士学生たちと交流を通じて、企業で仕事をするにしろアカデミアに残るにしろ、グローバル化の流れを考えると、博士号を取得しておくことは今後のキャリアにとって非常に重要であると実感したからです。世界規模の半導体メーカに勤務経験のあるポスドクの方によると、修士卒はほぼ学部卒と同じ扱いで、博士人材はきっちり研究をさせてくれるという扱いで、本当にはっきりしているそうです。実際、世界的にはそれがかなりスタンダードな考え方だという話も聞きました。
もちろん、研究に辛さよりも面白さを感じていて、自分の研究をもう少し進めたいという気持ちが前提にあっての話です。
博士課程では、支援制度(ひかりフェローシップ)のおかげもあって、研究にのめり込める環境に身を置き、挑戦的な研究に取り組めたのは良かったです。また、研究を通じて、課題発見/解決能力やプレゼン能力、そして論理的思考力が鍛えられた実感はあります。
もちろん、博士了までに論文誌に掲載できる論文になる成果を出せるかという不安は常にありますが、自分自身でモチベーションを維持して、考え続けることが大事だと思います。
博士後期課程修了後は日亜化学に就職します。研究開発にマンパワーとお金をしっかりかけていて、博士人材に対して正当な評価をされてる企業だと感じたことが大きかったです。自分が培ったスキルを活かして、社会の役に立つ、形に残るものをつくり出せたらすごい嬉しいなと思います。
もちろん、研究に辛さよりも面白さを感じていて、自分の研究をもう少し進めたいという気持ちが前提にあっての話です。
博士課程では、支援制度(ひかりフェローシップ)のおかげもあって、研究にのめり込める環境に身を置き、挑戦的な研究に取り組めたのは良かったです。また、研究を通じて、課題発見/解決能力やプレゼン能力、そして論理的思考力が鍛えられた実感はあります。
もちろん、博士了までに論文誌に掲載できる論文になる成果を出せるかという不安は常にありますが、自分自身でモチベーションを維持して、考え続けることが大事だと思います。
博士後期課程修了後は日亜化学に就職します。研究開発にマンパワーとお金をしっかりかけていて、博士人材に対して正当な評価をされてる企業だと感じたことが大きかったです。自分が培ったスキルを活かして、社会の役に立つ、形に残るものをつくり出せたらすごい嬉しいなと思います。
オフには趣味のカメラに没頭
普段は研究にのめり込む毎日ですので、休日にはスイッチを切り替えて研究とは離れるようにしています。写真が趣味なので、外へ出かけて撮影していることが多いですね。発色がめっちゃ好きなFUJIFILMのカメラを使っています。レトロな感じのデザインもかっこいいんですよね(笑)。
3年後の自分をイメージして後悔のない選択を!
現在は博士課程学生への支援制度が充実しており、進学へのハードルは下がっていると思いますが、払拭できない不安に関しては、大学内の博士課程の先輩学生を探して話を聞いたらいいと思います。「なんとなく不安だからやめておこう」というのは勿体無いです。3年後の自分をきっちりイメージして、後悔のない選択をしてほしいと思います。そして進学を決めたのなら、その選択が間違いではなかったと思える様に3年間を過ごしてください。
先端技術科学教育部
システム創生工学専攻(原口雅宣教授)
システム創生工学専攻(原口雅宣教授)
博⼠課程3年(取材時)
渡辺 智貴 さん
指導教員のコトバ
博士課程での経験を活かして、
グローバルに活躍してほしい!!
グローバルに活躍してほしい!!
渡辺さんはものごとを捉える視点に良いものがあり、自分の言葉で理解した内容に基づいた行動ができることが強みになっていると思います。後輩の学生達から見た彼は能力が高い特別な人に感じられたと思いますが、自身でグローバル水準の技術者の在り方を考えて大学院に進学し、努力や経験を積み重ねて自分を磨き上げた姿が周りからそのように見えたのでしょう。日々の積み重ねの結果ですから、本人は自分のことを“特別”とは決して思っていないはずです。もちろんD3現在の研究の説明や実験に関する能力は、M1のときとは比べものになりません。こちらが方向性を示すだけで、いろいろ工夫してテンポ良く研究を進めます。これは大学院在籍中に高い意識を持って小さなトライアンドエラーをたくさん繰り返したおかげだと思います。渡辺さんはもうすぐ企業の技術者として羽ばたこうとしていますが、ものごとの捉え方にさらに磨きをかけてさまざまな挑戦を続けて、企業の技術開発を牽引するグローバルな活躍をされることを期待しています。
最後に迷える学生に一言。
自分で考えるのが嫌いではなくてその考えに基づいて行動できる人、それと、工作・実験やプログラミングなどでの工夫が苦にならない人、そんな人には博士後期課程への進学をお奨めします。力を伸ばそうとする意識を持ち続けて積み重ねができる学生さんにとって、学部のときの成績とは関係なく当初の想像を超えた力を身につけることができる世界です。
最後に迷える学生に一言。
自分で考えるのが嫌いではなくてその考えに基づいて行動できる人、それと、工作・実験やプログラミングなどでの工夫が苦にならない人、そんな人には博士後期課程への進学をお奨めします。力を伸ばそうとする意識を持ち続けて積み重ねができる学生さんにとって、学部のときの成績とは関係なく当初の想像を超えた力を身につけることができる世界です。