卒業生の声

卒業生の声 アカデミア研究者

世界で唯一
光学計測装置をつくり
見えなかったものを最初に見る!

徳島大学大学院博士課程の修了後には、多様なキャリアパスが存在します。アカデミア研究者•教員、企業研究者、ベンチャー経営者、大学の技術職員など、その活躍の場は非常に広範囲です。本コーナーでは本学博士課程を修了した先輩たちのリアルな姿を紹介していきます。
今回紹介するのは、徳島大学ポストLEDフォトニクス研究所 特任助教の長谷栄治先生。医光融合領域における自身の研究への思いや、アカデミアの研究者として博士課程進学について思うことを語っていただきました。
長谷先生のキャリア

研究の面白さにハマり、
「勢い」だけで博士後期課程へ

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私は本当に「勢い」だけで博士後期課程に進学しました。学部の機械工学科で研究室配属後に光関係の研究を始めてみたら、それまでの授業とは違ってイイ感じだったのです。そして博士前期課程に進んでからは、研究の面白さにどんどんハマっていきました。
配属当初から安井武史先生が学生たちに「博士後期課程での研究」や「博士号取得後のキャリアパス」について紹介しておられたこともあり、研究の面白さに目覚めた私はほぼ「勢い」だけで博士後期課程に進学しました。安井研での研究が自分の進学モチベーションだったので、他大学への進学は一切考えませんでした。
加えて、学部4年生10月から2月に他大学へ短期留学した際、そこの博士課程の先輩3人に話を聞けたという経験も大きかったですね。実際の博士後期課程学生と話をしてみないと、学生生活のイメージが湧かないですから。

どっぷり研究に浸かれた
博士後期課程

博士課程の学生生活を振り返ってみると、研究にどっぷり浸かっていた感じです。
生物系の試料を自分で準備したうえで、自作の光学計測装置で測定するのが私の研究の流れ。細胞を培養しつつ自分で光学計測装置も作っていたので結構きつかったですが、今思えば、研究にどっぷり浸かることのできた時代でした。
博士後期課程の間は、安井先生が参画されていたERATO※1プロジェクトのRA※2で雇用していただいたので、経済的な不安はあまりなく、研究を続けることができました。もしERATOのRA雇用がなければ学内の支援制度を必死で探していたと思います。
学生時代は博士号を取得したら「やったぞ!」と感激すると思っていましたが、研究に没頭しだしたら博士号は通過点でしたね(笑)。これを持ってないとアカデミアの研究者として採用されないので、最低限のスタートラインには立てたという感じです。
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※1. ERATO:科学技術進行機構(JST)が運営する戦略的創造研究推進事業の一つであるExploratory Research for Advanced Technologyの略称。我が国が直面する重要課題の克服に向けて、既存の研究分野を超えた分野融合や新しいアプローチによって挑戦的な基礎研究を推進することで、今後の科学技術イノベーションの創出を先導する新しい科学技術の潮流の形成を促進し、戦略目標の達成に資することを目的とした研究プロジェクト。
※2. リサーチ・アシスタント:優れた研究開発能力雨を有する大学院生を、非常勤職員として雇用するときの職名

博士後期課程修了後は
学内の研究者支援制度を活用

博士号取得後に徳島大学ポストLEDフォトニクス研究所の特任研究員に採用されてからは、T3支援制度※3の支援を受け、その後、文部科学省の研究者育成制度 HIRAKU GLOBALに教員として採用されています。HIRAKU GLOBALでは研究交流制度(海外の機関での研究を支援する制度)を活用して、フランスのボルドー大学に2ヶ月滞在し研究生活を送りました。メキシコ、パキスタンそしてメインはフランスという多国籍な研究者に囲まれて、2ヶ月間メリハリをつけた実験漬けの生活で、たくさん学べました。彼らとはこれから、学会などで逢えればいいなと思っています。
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※1. T3支援制度:任期付の雇用形態で自立した研究者として経験を積むテニュアトラック制度の定着・普及を促進するために、テニュアトラック教員にスタートアップ経費を支援する制度。

自作顕微鏡で生体組織力学特性の可視化に挑戦中

私はこれまで、生体組織の見えないものを見ようとしてきました。顕微鏡のような光学計測装置で試料を測定して可視化する研究です。通常の顕微鏡は普通の可視光を使いますが、私は特殊な波長の光を使うので装置を自作する必要があります。つまり、独自の光学計測装置で得られた測定データは世の中の誰も持っていない情報であることが多いので、研究として成立するのです。新しい装置をつくる際には、光源などを変えていきます。
現在は生体の力学特性に注目し、サブミクロンレベルで生体組織を測定し、硬さの違いを可視化しようとしています。硬さを光で評価する例としては、超音波での肝硬変検査などが一般的ですが、さらに細かいレベルで測定できれば、もっと新しいことがわかってくるのではと期待しています。最近装置がようやく完成したので、何を見るかはこれから検討していく予定です。
こういう生体の力学特性を測定できる装置は技術的なハードルが高くて、誰もが作れるわけではありません。私は機械工学出身というバックグラウンドと光学の豊富な知見を活かした独自の光学計測装置を強みとして、生体組織の力学特性を光学で測定するという研究に挑戦しようと考えています。
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世界で最初に見つけること
それが研究の醍醐味

私にとっての研究の醍醐味とは、世界で最初に何かを見つけられることですね。世界初の装置を作ることができれば、世界初の発見が割と身近にあるのです。そこに惹かれて今の研究テーマに入ってきました。
自分は研究者としてはまだ若いと思っていますので、今はともかくいろいろな測定対象や測定装置の探索実験を重ねていく段階だと思っています。そして、最終的には「この装置じゃないと、この対象は測定できない」というようなレベルまで進んでいければいいですね。
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悩める学生は博士課程学生を探せ!!

博士後期課程への進学を検討するためには、博士課程在学生や博士号を取得した人が、どんな風に生きているのかの情報収集が必要です。ネットの情報でははっきりしないので、知り合いの知り合いでもいいから身近な先輩を探し出し、直接話を聞いてみるのが一番いいと思います。徳島大学キャンパスでは博士課程学生はレアキャラですが、ともかく博士課程学生を探せ!ですね。ちゃんと話をしてもらえるか不安かもしれませんが、私も博士後期課程に進学してからは、同じ道を目指す仲間を増やそうというモチベーションが出てきましたから、他の博士課程の学生もきちんと話をしてくれると思います。

アカデミアの研究者を目指すには

私にはできませんでしたが、5年、10年先に最終的に何をやりたいのかイメージを膨らませながら学生生活を送ることをお勧めします。研究にハマって勢いだけで博士後期課程に進学すると、結構しんどい場面も多いですから(苦笑)。
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博士後期課程修了後にアカデミアの研究者としてやっていくためには、まず研究やテーマが好きというのは当たり前。そして、働いた時間の分だけお金が欲しい、安定を求める人はギャップを感じるかもしれません。ここは隠してはいけない大事なポイントだと思ってます。不安定さもポジティブにちゃんと受け入れて、失敗したら諦めて切り替えてまた挑戦する、これを繰り返すことができるメンタルが必要かもしれません。
それ以外にアカデミアの研究者はこうじゃなきゃいけないということはありません。多様な考え方の人がいれば、やることもやり方も違うだろうし、研究の裾野が広がるのではないかと感じています。
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徳島大学
ポストLEDフォトニクス研究所
特任助教
長谷栄治